第1段のクライマックスである贈答歌「春日野の若紫のすり衣」品詞分解と修辞法の解明は、定期テストおよび共通テスト対策において最重要の単元です。この31文字には、平安初期の高度なレトリックが幾重にも凝縮されています。
【和歌本文】
春日野の 若紫の すり衣 しのぶの乱れ 限り知られず
【和歌の品詞分解】
・春日野:名詞(春日の野原)
・の:格助詞
・若紫:名詞(紫草の若い芽。ここでは「若い美しい姉妹」の見立て・比喩)
・の:格助詞
・すり衣:名詞(草木を布に擦り付けて染めた衣)
・しのぶ:名詞/動詞(掛詞)
・の:格助詞
・乱れ:名詞(乱れること)
・限り:名詞(限度、果て)
・知ら:動詞(ラ行四段活用「知る」の未然形)
・れ:助動詞(自発・可能の助動詞「る」の未然形)
・ず:助動詞(打消の助動詞「ず」の終止形)
初冠和歌掛詞縁語修辞法として押さえるべきポイントは以下の4点です。
1. 掛詞(かけことば)
「しのぶ」に「信夫(しのぶ摺りの産地・染め物の名称)」と「忍ぶ(他人に知られないよう恋心を我慢する)」の2つの意味が掛けられています。
2. 序詞(じょことば)
第1句から第3句「春日野の若紫のすり衣」全体が、第4句の「しのぶ」を導き出すための17文字の長い序詞となっています。
3. 縁語(えんご)
布や染め物に関連する言葉として、「すり衣」「しのぶ(信夫摺り)」「乱れ(染め模様の乱れ)」が意味の上で響き合っています。
4. 本歌取り・発想源(本歌の心ばへ)
本文中でも言及されている通り、『古今和歌集』巻14(恋歌四)に収められている河原左大臣(源融)の有名歌「みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし われならなくに」を踏まえています。若き男は、機転を利かせてこの名歌の発想を引用し、即座に自らの情熱的な恋心へと仕立て直したのです。