撮影の舞台となったのは、大分県の山間に実在する古びた温泉街・湯平温泉だ。数百年の歴史を刻む急勾配の石畳と、夜闇に揺れる赤提灯が異様な美しさを醸し出す。現地では数ヶ月間にわたり徹底した情報統制のもと、密やかなロケが行われた。
撮影現場からの秘話として、雨のシーンのこだわりが語られている。本物の霧と人工降雨を組み合わせ、深夜の石畳を濡らし尽くして撮影が行われた。氷点下に迫る極寒のなか、役所広司と満島ひかりはカットがかかっても役に入り込み、震えながら互いを睨みつけ合っていたという。美術チームは既存の宿の内部を完全に改装し、昭和初期の陰影が残る重厚な空間を作り上げた。