伊藤歩という稀代の女優を語る上で、絶対に外せないのが映画監督・岩井俊二との出会いだ。1996年に公開された不朽の名作『スワロウテイル』で、彼女は弱冠16歳にしてヒロインのアゲハ役に抜擢された。
架空の都市「円都(イエンタウン)」を舞台にした殺伐としながらも美しい世界観の中で、彼女が見せたピュアな透明感と泥臭い生命力。第20回日本アカデミー賞新人俳優賞および優秀助演女優賞をダブル受賞したその演技は、日本映画史に鮮烈な記憶として刻まれている。当時から「どこか影のある美少女」としての印象を放っていたが、この時期に形作られた神秘的な佇まいこそが、後の「誰にも似ていないが、誰の面影も感じさせる」独特な存在感の原点となった。