二人の物語の原点は、1990年代後半の早稲田大学政治経済学部にまで遡る。当時、すでに『五体不満足』の爆発的なヒットによって時代の寵児となっていた乙武洋匡氏。その学生生活を後輩として支えていたのが、後に妻となる女性だった。
彼女は決して表舞台に出ることを好むタイプではなかった。しかし、車椅子での移動や講義ノートの作成、日常の細やかなケアを自然体で引き受け、彼にとって最も安心できる居場所を作っていった。周囲の学生たちも「二人の空気感は特別だった」と口を揃える。2001年、二人は婚姻届を提出。障がい者と健常者の垣根を越えたパートナーシップとして、メディアはこぞって祝福の声をあげた。
結婚生活のスタートとともに、彼女の日常は想像を絶する「献身」の連続となった。食事の介助から排泄のサポート、着替えに至るまで、24時間体制のケアが求められる。それでも彼女は笑顔を絶やさず、夫の創作活動や社会活動を陰ながら支え続けた。そこには、純粋な愛情と深い信頼関係が存在していたに違いない。