カフェ・ド・ランブルを訪れる者の大半が目当てにするのが、フランス語で「ブラン・エ・ノワール(白と黒)」の名を持つ傑作、「琥珀の女王」です。脚付きのリキュールグラスに注がれた漆黒の液体の上に、純白のエバミルク(無糖練乳)が美しい二層のグラデーションを描きます。
このメニューには、店側が定めた厳格なルールが存在します。「決してスプーンでかき混ぜず、そのままグラスに口をつけて飲むこと」。氷を使わずにシェイカーや氷水で急速冷却された濃厚な甘み付き珈琲エキスが、冷たいミルクの層をくぐり抜けて舌へと滑り込みます。口内に広がるのは、カカオのような深いコクと上品な甘み、そして鼻腔を抜ける芳醇なアロマ。液体同士の比重差を利用したこの抽出構造は、洋菓子にも勝る圧倒的な満足感をもたらします。
そして、もうひとつの代名詞がオールドコーヒー(オールドビーンズ)です。一般的なスペシャルティコーヒーの世界では「生豆の鮮度=正義」とされ、収穫後1年以内のニュークロップが重宝されます。しかしランブルでは、定温・定湿の倉庫で10年、20年、時には40年近く寝かせた生豆を使用します。
歳月を経て青緑色から琥珀色へと変化した生豆は、余分な水分と渋み成分が抜け、豆の芯まで均一に火が通る状態へと熟成されます。これを関口氏考案の直火式焙煎機で深煎りし、特製ネルで極めて低速にドリップすることで、角の取れた円熟の酸味と、枯淡の境地とも言えるビターな余韻が生み出されるのです。