容子の病死後、美奈子と槐多は長い空白を埋めるように言葉を交わし、ついに互いの想いを通わせます。しかし、運命は残酷な試練を用意していました。街を襲った記録的な豪雨の夜、土砂崩れの危険が迫る中、槐多は美奈子の安否を気遣い彼女の家へと向かいます。激流と崩落に巻き込まれた美奈子を救い出した槐多でしたが、自らは力尽き、命を落としてしまうのです。
観る者に強い余韻を残すのが、火葬場での儀式を終えた後のラストシーンです。美奈子は人目を盗み、槐多の遺骨の破片を口に含みます。そして翌朝、何事もなかったかのように牛乳瓶を抱え、急な坂道を一歩一歩踏みしめながら登っていく姿で映画は幕を閉じます。
骨を噛み砕き体内へと取り込む行為は、他者には決して不可侵な「完全なる合一」の象徴です。世間の倫理や不条理な過去に引き裂かれた2人が、死という絶対的な別離を経て初めて永遠に結ばれた瞬間でした。悲劇でありながら、どこか晴れやかな美奈子の表情は、愛する人を自らの中に宿して生きていく覚悟を力強く物語っています。