そして、彼の評価を決定づけ、観客の心に深い傷痕を残した問題作こそが映画『愛の病』だ。
実際に起きた痛ましい事件をモチーフに制作されたこの作品で、主演の瀬戸さおりが見せた鬼迫の演技は今なお語り草となっている。愛に飢え、欲望の深みへと堕ちていく主人公の姿を、カメラは冷徹なまでに客観的な視点で捉え続けた。過剰な同情も断罪も拒絶するそのスタンスは、観客に対して「お前はこの狂気を笑えるか」と突きつけるかのようだった。
瀬戸さおりという女優の潜在能力を極限まで引き出した演出術は、映像制作の現場においても語り継がれている。単なるスキャンダラスな再現ドラマに終わらせず、人間の業そのものを芸術の域にまで引き上げた手腕は、彼のキャリアにおける金字塔と言えるだろう。