映画『ノルウェイの森』は公開当時、第67回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に出品されるなど国際的な注目を集めた一方、観客やファンの間では評価が大きく分かれました。
絶賛されたポイントは、圧倒的な映像美と美術、そして俳優陣の剥き出しのパッションです。特に1960年代後半の日本の空気感をノスタルジックかつ前衛的に切り取ったビジュアルは、海外メディアからも高い評価を獲得しました。
一方で、原作の持つ軽妙なユーモアや日常のリアリズムを愛する読者層からは、「原作の多層的な魅力がエロスと暗さに偏りすぎている」「会話のテンポ感が原作のイメージと異なる」といった厳しい指摘も寄せられました。
しかし、一過性のブームが過ぎ去った現在では、「単なる原作の忠実な再現ではなく、トラン・アン・ユンという作家が村上春樹の世界を自らの美学で解釈した傑作アートフィルム」としての評価が定着しています。