物語が大きく動くのは、過労と無理が祟ったサキが原因不明の重病で倒れ、寝たきりになってしまう中盤以降です。妻の異変に直面した大介は、自らの愚行を激しく悔恨し、憑き物が落ちたようにサキの看病に人生のすべてを捧げることを誓います。
大介はかつてサキに贈った手作りの振り子時計を病室に飾り、彼女が少しでも長く生きられるよう、寸暇を惜しんで寄り添い続けます。サキの意識が戻らない日々が続くなかでも、大介は彼女の手を握り、高校時代の思い出や感謝の言葉を語りかけます。自らの健康を省みず、妻のために頭を下げて働き、献身的に介護を続ける大介の姿は、観客の胸を激しく打ちます。
そして訪れる運命のクライマックス。サキの命の灯火が消えかけ、心電図の波形がフラットに近づくなか、大介の視界には巨大な「時の振り子」が現れます。刻一刻と死へ向かって進む振り子を、大介は血だらけになりながら必死に両手で押し戻そうと抗います。原作パラパラ漫画の象徴的なシーンが生身の人間によって再現されるこの瞬間、劇場のあちこちからすすり泣きが漏れました。
力尽きそうになる大介の手を、最後にそっと押し戻したのは、意識を取り戻したサキの優しい笑顔でした。「あなたと過ごせて幸せだった」と伝えるかのようなサキの眼差しに見送られ、彼女は静かに息を引き取ります。後悔と絶望の果てに、夫婦が確かに分かち合った真実の愛が提示される圧巻のラストは、まさに涙なしには見られない屈指の名場面です。