かつて自由に谷底へと降り立ち、清涼な水流と苔むす岩壁を間近に仰ぎ見ることができた由布川渓谷ですが、その景観を一変させたのが2026年7月の記録的豪雨(令和2年7月豪雨)でした。渓谷沿いの急峻な斜面で大規模な土砂崩れや落石が発生し、観光の要であった椿入口などの階段や歩道が壊滅的な打撃を受けました。
地元自治体(由布市・別府市)および土木関係者の報告によると、由布川渓谷の地質は脆弱な凝灰角礫岩と火山灰層が重なり合っており、一度崩壊した斜面の再整備には高度な治山技術と長期の観察期間を要します。これが「長期間にわたり立ち入り禁止が続いている」とされる構造的な理由です。
2026年現在の復旧状況としては、上流部の猿飛橋周辺の遊歩道や展望スペースの補修・安全柵設置が完了しており、渓谷美を安全に俯瞰できる環境が整っています。一方で、谷底へ通じる旧来の一般歩道は落石リスクが完全に排除できない箇所があり、単独での無警戒な降下は引き続き規制の対象となっています。行政と地域振興会は「安全を最優先にした段階的開放」という方針を貫いており、無秩序な侵入を防ぎつつ価値を伝える取り組みが進められています。