宇多田ヒカル「Automatic」Editの謎|原曲との違いと真相

宇多田ヒカル「Automatic」Editの謎|原曲との違いと真相

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宇多田ヒカルのデビュー作『Automatic』において、1998年12月9日にリリースされたシングル盤の音源と、1999年3月10日に発売され国内累計765万枚以上という金字塔を打ち立てた1stアルバム『First Love』収録の「Album Edit」には、どのような違いがあるのでしょうか。

ネット上の一部では「歌詞の一部がカットされているのではないか」「テンポ(BPM)が異なるのではないか」といった憶測が散見されますが、実際の波形データおよびマスターテープの記録を検証すると、歌詞の脱落やメロディラインの削除といった構造的な変更は一切行われていません。演奏時間も共に5分28秒(フェードアウトのタイミングにより数フレームの誤差のみ)で統一されています。

では、なぜわざわざ「-Album Edit-」と銘打たれたのか。その核心は「音場(ステレオイメージ)の再構築」と「アルバム全体のリスニング体験の最適化」にあります。

『First Love』の制作時、マスタリングはニューヨークの名門スタジオ「Sterling Sound」の世界的エンジニアであるテッド・ジェンセン(Ted Jensen)に委ねられました。シングル盤の『Automatic』は、日本のラジオ局でのオンエアやラジカセ、8cmCDプレイヤーでの再生を想定し、中低域のアタック感とボーカルの抜けを前面に押し出したアグレッシブなマスタリングが施されていました。

一方、アルバム版では、続く2曲目『Movin' on without you』への有機的な繋がりや、アルバム1枚を通したダイナミックレンジの調和を重視。ベースラインの超低域(サブベース)の解像度を整理し、宇多田ヒカル特有の息づかいやフェイク、ウィスパーボイスの倍音成分がより立体的に立ち上がるよう、イコライジングとコンプレッションが再設計されたのです。単なるプロモーション用の尺調整ではなく、「アルバムというひとつの作品世界に溶け込ませるための音響的トリートメント」こそが、Editの正体でした。

木村 陽翔
著者

木村 陽翔

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。