航路標識としての役割を果たす灯台は全国に約3,000基ありますが、一般の人が内部に入り、頂上部のバルコニー(踊り場)に立てる「のぼれる灯台」はわずか16基しかありません。御前埼灯台は、静岡県内でその貴重な体験ができる唯一のスポットです。
重厚なエントランスをくぐると、明治初期のクラフトマンシップが息づく螺旋階段が頭上へと続いています。一段一段踏みしめながら塔頂へと登りつめ、細い扉を押し開けた瞬間に視界へ飛び込んでくるのは、遮るものが一切ない270度の大海原です。
岬が太平洋へ鋭く突き出ている地理的特性から、東は駿河湾の彼方に富士山や伊豆半島を望み、西には遠州灘の雄大な波打ち際が果てしなく広がります。水平線が直線ではなく緩やかな弧を描いている光景は、「地球は本当に丸い」という事実を視覚的に納得させてくれる決定的な瞬間です。