天文学の公式データによると、地球の中心から月の中心までの平均距離は約38万4400キロメートルです。これは地球の赤道全周(約4万キロメートル)を約9.6周分、地球の直径(約1万2742キロメートル)で換算すると約30個分がすっぽり収まる距離に相当します。
もし仮に、地球から月まで一直線に伸びる透明な道路が存在したとして、私たちが日常的に利用する移動手段や物理現象の限界値で向かった場合、どれほどの時間を要するのでしょうか。現実的な巡航速度をもとに試算した比較データが以下の表です。
徒歩で11年、新幹線でも約2か月近くかかるという試算は、地球上の交通網がいかに小さな球体の上で完結しているかを浮き彫りにします。一方で、宇宙の物理法則における最高速度である「光の速さ」をもってしても片道約1.28秒を要します。私たちが今この瞬間に見上げている月の姿は、常に1.28秒前の過去の映像なのです。
この「わずか1秒強のタイムラグ」は、天文学的には至近距離ですが、有人探査や遠隔操作ローバーの運用現場では極めてシビアな壁となります。地球から月面の重機をリアルタイム遠隔操作しようとすると、指示を出してから手元にフィードバック映像が返ってくるまでに約2.6秒の遅延が生じるため、完全な自動運転AIの搭載が不可欠となる理由がここにあります。