雨の日の洗車を語る上で欠かせないのが、塗装面を脅かすケミカルダメージのメカニズムです。世間では「雨水=酸性雨で車を汚す元凶」と恐れられがちですが、カーケアの科学においては水垢とイオンデポジット防止の観点から水道水の方がはるかに警戒すべき対象となります。
水道水には、飲用基準を満たすためにカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、ケイ素(シリカ)といった無機質ミネラル成分が豊富に含まれています。晴天時の直射日光下で洗車を行い、水道水滴がレンズ状のまま熱で急激に蒸発すると、これらのミネラル分だけが塗装面に白いリング状の結晶として残留します。これが「イオンデポジット」です。さらに放置すると、塗装のクリア層を熱と酸で侵食し、クレーター状の窪みを作る「ウォータースポット」へと悪化します。
これに対し、上空から降る純度の高い雨水は、大気中の煤煙を取り込んでいるものの、無機質ミネラル分の含有量は水道水に比べてごく微量です。問題となるのは、雨水そのものよりも「塗装上に残った水道水の成分」や「雨上がりに急激に太陽が照りつけて生じる濃縮現象」です。雨の日に水道水で汚れと古い油膜を一気に洗い流し、適切な流水処理を行うことは、結果的にウォータースポット対策として非常に理にかなったアプローチとなります。
特に高硬度のガラス被膜を形成しているコーティング施工車の雨の日洗車では、表面に付着したシリカスケールが定着する前に雨水と界面活性剤で浮かせてリセットできるため、撥水性能と深い艶を長期維持するために欠かせないルーティンとなっています。