ネット上の相談掲示板などで「略式起訴なら前科がつかないですよね?」という質問が頻繁に見受けられますが、これは極めて危険な誤解です。略式手続で下される「略式命令」は、裁判官が下す正式な有罪判決と同等の効力を持ちます。検察庁が管理する「犯歴票」および本籍地の市区町村が管理する「犯罪人名簿」に生涯記録され、法的な前科として一生残ります。
刑事訴訟法第461条が定める略式裁判の条件と100万円以下の罰金刑の枠組みには、厳格な法的手続きが課されています。対象となるのは簡易裁判所の管轄に属する事件に限られ、科される刑罰は100万円以下の罰金または科料のみです。懲役刑を科すことは法律上できません。
実務上、検察官が略式命令を請求する際、略式命令の罰金額相場と支払い期限は以下の水準で運用されています。
暴行罪や単純な窃盗・万引き初犯であれば10万円から30万円程度、痴漢(迷惑防止条例違反)や酒気帯び運転では30万円から50万円程度、過失運転致死傷や悪質な盗撮事案では50万円から100万円近くに達するケースが散見されます。裁判所から略式命令の謄本を受け取った後、指定された検察庁の徴収窓口に対し、原則として告知から14日以内に現金一括で納付しなければなりません。
もし期日までに罰金を完納できない場合、刑法第18条の規定に基づき、1日あたり5,000円換算で刑務所内の「労役場」に留置され、強制労働に従事させられる法的リスクが存在します。
また、処分に不服がある場合は、略式命令の告知を受けた日から14日以内に、裁判所に対して正式裁判の請求と不服申立ての手続きを行う権利が保障されています。しかし、正式裁判に移行すれば公開の法廷で改めて審理されることになり、証拠関係次第では略式命令と同等以上の重い量刑が下されるリスクも考慮しなければなりません。