「ゼロ葬」という概念が社会に広く認知されたきっかけは、宗教学者の島田裕巳氏が著した書籍『0葬 成仏を忘れた日本人』である。本書で提唱された「骨を持ち帰らない」「墓を持たない」という思考は、従来の伝統的な弔い文化に一石を投じた。家制度の形骸化や少子高齢化、単身世帯の増加といった構造的変化が進行するなかで、死生観のイノベーションとして支持を広げたのである。
かつてNHKスペシャル『無縁社会』が浮き彫りにした孤独死や、縁の途切れた人々の遺骨問題は、多くの人々に「死後の後始末を誰に頼むのか」という切実な問いを突きつけた。身内に迷惑をかけたくないという強い思いが、遺骨をあえて残さないゼロ葬という選択肢を現実的なソリューションとして浮かび上がらせた経緯がある。