昭和歌謡史におけるエポックメイクな出来事として、1986年1月にリリースされたシングル「くちびるNetwork」の存在を外すことはできない。この楽曲は、当時の音楽シーンにおける最高峰の才能を結集させて誕生した奇跡のコラボレーションだった。
作詞を担当したのは、サンミュージックプロダクションの先輩であり、既にトップスターとして君臨していた松田聖子。そして作曲・編曲を手掛けたのは、世界の音楽界にその名を轟かせていた坂本龍一だ。洗練されたシンセポップのサウンドと、キャッチーでありながらどこか哀愁を帯びたメロディライン。スタジオ作業でのセッション中、坂本龍一は彼女の歌声が持つ独特の倍音と透明感に強い感銘を受けたという。
オリコンチャートで初登場1位を獲得したこの楽曲は、80年代アイドルの枠組みを完全に脱構築し、先進的なJ-POPの先駆けとなった。今なお語り継がれる制作背景には、関わった表現者たちの妥協なき情熱が流れていた。