音楽界の第一線で旋風を巻き起こす一方、彼女の創作意欲はついに文学の領域へとあふれ出す。1985年、短篇集『演歌の竜』『老人の港』で第93回直木三十五賞を受賞。作詞家が直木賞小説の最高峰を手にするという快挙は、文壇および出版界に大きな衝撃を走らせた。
音楽業界の裏舞台や夜の街に生きる人々の悲喜交々を描き出す描写力は、圧倒的だった。ヒット曲を量産してきた研ぎ澄まされた感性が、小説というキャンバスの上でいっそう深みを増して結実したのだ。言葉ひとつで情景を切り取るその筆力は、文芸批評家からも絶賛を浴びることとなった。