生物学の分類において、真菌と細菌は「目に見えない微生物」という共通点を除けば、人間と昆虫以上の隔たりを持つ別の生命体です。その最大の境界線は、細胞内に遺伝情報(DNA)を包み込む「細胞核」が存在するか否かという点にあります。
細菌は、およそ38億年前に地球上に出現したとされる原核生物に分類されます。大腸菌や黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌などがこれに該当し、細胞膜の中にDNAがむき出しの状態で漂っています。小胞体やミトコンドリアといった膜で仕切られた高度な細胞小器官を持たず、非常にシンプルで原始的な生命システムで急速に分裂・増殖します。
一方で、カビ、酵母、キノコなどの総称である真菌は、人間や植物と同じ真核生物です。DNAは強固な核膜に守られた「細胞核」の中に格納され、エネルギー代謝を担うミトコンドリアなどの発達した細胞小器官を完備しています。つまり、進化系統樹で見れば、真菌は細菌よりも圧倒的に「人間の細胞に近い」複雑な存在です。
さらに両者を決定づけているのが、外側を取り囲む細胞壁の構造違いです。細菌の細胞壁は主に「ペプチドグリカン」という糖とペプチドの複合体で構築されていますが、真菌の細胞壁は「グルカン」や「キチン」といった多糖類で強固に編み上げられています。また、細胞膜の主成分にも決定的な差があり、細菌の細胞膜が多様な脂質で構成されるのに対し、真菌の細胞膜には「エルゴステロール」という真菌特有の脂質が含まれています。この「外壁と膜の原材料の違い」が、治療薬の効き目を分ける最大の急所となります。