今回の取材で初めて明らかにされたのは、囲炉裏の炭に秘められた温度制御の真実だ。季節やその日の湿度、さらには風の吹き込み具合によって、使用するナラ炭と備長炭の配分を分単位で変更しているという。メディアの表舞台にはほとんど出ないこの裏側のこだわりこそが、焦げ目を最小限に抑えつつ芯まで火を通す技術の根幹をなしている。
さらに、仕込み段階での「寝かせ」のプロセスにも独自の秘訣が存在する。水揚げされたヤマメをただすぐに焼くのではなく、清らかな流水で数時間泳がせた後、最適に冷やされた環境で適度に水分を抜く。この極めて手間のかかる準備作業が、身の余分な水っぽさを取り除き、焼き上がりの旨味を凝縮させるのだ。