かつて、医学界において「心」と「肉体」は切り離されて考えられていた。デカルト的な二元論の呪縛だ。しかし、近年の神経免疫学の進歩はその常識を根底から覆した。脳の視床下部から放出されるストレスホルモンが、わずか数秒で全身の免疫細胞の活性を低下させるルートが特定されたのだ。
「これはもはや、単なる心理的な影響ではありません。物理的な神経回路の暴走です」と、東京脳科学研究所の佐藤博士は指摘する。ストレスを感じた瞬間、脳は体内に「緊急事態宣言」を発令する。結果、血管は収縮し、炎症性サイトカインが急増する。風邪でもないのに体がだるい、熱っぽい。その正体は、脳が作り出した幻影ではなく、リアルな肉体反応なのだ。