本作において最も不気味で、同時に最も同情を誘うキャラクターが「カオナシ」だ。己の言葉を持たず、他人の声を借りてしか喋れない彼は、まさに現代のネット社会に生きる人々のメタファーである。他者からの関心を引くために金(砂金)をばら撒き、肥大化していく姿は、SNSの「いいね!」を求めて承認欲求を暴走させる現代人の縮図だ。
カオナシが千尋に拒絶された途端に狂暴化するシーンは、拒絶への恐怖と極限の孤独を表している。彼が最終的に銭婆の家で穏やかな居場所を見つける結末は、物質的な豊かさではなく、ささやかな手仕事と静かな人間関係こそが魂を救うという、監督からの強いメッセージなのだろう。