『凪のお暇』を語る上で、読者や視聴者の視線を最も釘付けにしたのが、元カレ・我聞慎二(がもん しんじ)と、隣人・安良城ゴン(あらしろ ごん)という強烈な魅力を持つ2人の男性との三角関係です。「凪のお暇 慎二 ゴン どっち」という検索クエリが常に上位を占め続けたことからも、その関心の高さがうかがえます。
まず、2019年に放送されたTBSドラマ版の最終回における結末を振り返ります。アパートの解体と「お暇の終了」が迫る中、ゴンは凪に合鍵を渡し「一緒にいてほしい」と決死の告白を果たしました。一方の慎二も、不器用ながら凪の成長を誰よりも認め、彼女の背中を押します。凪が出した答えは、「2人のどちらとも付き合わない」という決断でした。誰かの付属物になるのではなく、自分の足で立ち、新しく見つけた「コインランドリーを経営する」という夢に向かって歩み出す道を選んだのです。
一方、月刊誌『Eleganceイブ』で2026年4月号(2026年2月発売)まで連載が続いた原作漫画の結末では、ドラマ版よりもさらに深い内省と現実的なステップが描かれました。凪は慎二との関係を「過去の自分を映す鏡」として清算し、ゴンとの刹那的な居心地の良さからも自律的に距離を置きます。物語のクライマックスにおいて凪が対峙したのは、男性たちとの恋愛問題以上に、自身の自己肯定感を根本から縛り付けていた実母・大島夕(えみこ)との共依存関係でした。誰かを選んで救われるのではなく、「自分で自分を好きになる」境地に達したことが、原作が提示した真のエンディングです。