長年愛されたワールド会館がなぜ取り壊しに至ったのか。その背景には、単なる建物の寿命にとどまらない複数の深刻な構造問題が存在していました。
第一の理由は、建物の深刻な老朽化と旧耐震基準問題です。1981年以前の旧耐震基準で建てられた同ビルは、コンクリートの劣化や配管の破損が進み、大地震発生時の倒壊リスクが専門家からも指摘されていました。外壁の剥落や雨漏りも常態化しており、補修による延命は限界に達していました。
第二の理由は、防災・消防活動上の重大な懸念です。中野5丁目の飲食店街は道幅が非常に狭く、木造建物や雑居ビルが密集する防災上の重点対策地域です。万が一、ワールド会館で大規模火災が発生した場合、消防車の進入が困難であり、周辺一帯へ甚大な被害が拡大する危険性が高まっていました。
第三の理由は、中野駅北口再開発との連動です。中野駅周辺では駅舎の改良や新改札の設置、中野サンプラザ周辺の再整備など、100年に一度の大規模プロジェクトが進行しています。ワールド会館が位置するエリアも、安全で回遊性の高い街区へと再編する都市計画の対象に含まれていたことが解体の決定打となりました。