子門真人を語る上で避けて通れないのが、1975年にリリースされたシングル『およげ!たいやきくん』を巡る印税問題の真相です。フジテレビ系の子供向け番組『ひらけ!ポンキッキ』から誕生した同曲は、空前の社会現象を巻き起こし、公認売上枚数450万枚超という前人未到のギネス世界記録を樹立しました。
当然、世間は「子門真人は天文学的な印税を手にして大富豪になった」と信じ込みました。しかし、現実はあまりにも残酷なものでした。当時の子門真人は専属契約ではなく、1曲あたりの録音に対して固定の報酬が支払われる「吹き込み料契約(買い取り契約)」を結んでいたため、手元に入ったギャランティはわずか数万円(諸説あるものの2万5000円〜5万円程度)だったのです。
メガヒットによってレコード会社やテレビ局、作詞・作曲者には数十億円規模の莫大な利益がもたらされました。一方、歌い手である子門真人には売上に比例する正規の歌唱印税は一切支払われませんでした。後にレコード会社側から異例の配慮として記念品やプラチナディスク、若干の功労金が贈呈されたものの、世間が思い描くような巨額の富とはかけ離れたものでした。
何よりも彼を追い詰めたのは、実態を知らないマスコミによる「億万長者」としての過熱報道と、金銭目当てで群がってきた有象無象の人間たちでした。この理不尽な狂騒劇が、彼の心に深い傷を残すことになります。