今年の音楽シーンにおける大きなトピックの一つが、最新の音響解析技術を用いて制作された「サウンド・オブ・サイレンス」の空間オーディオ(Spatial Audio)版のリリースだ。これまで潰れていたアコースティックギターの弦の擦れる音、アート・ガーファンクルの息遣い、そして後半に向けてビルドアップしていくドラムのダイナミズムが、まるでリスナーの目の前で演奏されているかのように再現されている。
このリマスター版を聴くと、単に音がクリアになっただけではないことに気づく。音と音の間にある「無音の空間」が、より立体的に感じられるのだ。皮肉なことに、最新テクノロジーが、半世紀以上前の「沈黙」の美しさを最も純粋な形で現代に蘇らせたと言える。