インターネットカルチャーにおいて、多画数漢字は格好のエンターテインメント素材です。SNS上における画数が多すぎる漢字のネットの反応を分析すると、定期的に以下のような声が数万件規模のリポストを集めています。
「テストの回答欄に書いたらそれだけで試験時間が終わる」「老眼にはただの黒い四角形にしか見えない」「スマホの画面をピンチアウトして初めて部首が判明した」といったユーモア溢れる阿鼻叫喚のコメントは、デジタルフォントの微小なドット表示に起因するゲシュタルト崩壊の面白さを浮き彫りにしています。
しかし、これが「笑い話」で済まないのが実生活でその文字を背負う人々です。実在する名字の中で日本一画数が多い苗字として知られるのが、岩手県雫石町などにルーツを持つ「躑躅森(つつじもり)」さんです。総画数は驚異の54画。「躑(20画)」「躅(21画)」は植物のツツジを意味し、「森(13画)」と合わさって美しい自然景観を表す由緒ある苗字ですが、当事者が直面する生活上の負担は並大抵ではありません。
実際に取材現場や名字研究の当事者談として語られるのは、行政窓口での書類記入、銀行口座の開設、そして学校のテストにおける過酷な手間の連続です。特に昨今のデジタル行政への移行期においては、「入力フォームの文字数制限に引っかかる」「自治体のシステムで外字扱いになりオンライン手続きが中断する」「印鑑屋に特注で作ってもらった実印の印面が細かすぎて朱肉が詰まる」といった、現代のIT社会ならではの実害と苦悩が報告されています。画数の多さは、文化的なロマンであると同時に、実務においては極めて重いコストを強いる両刃の剣でもあります。