一方、この激動の過渡期において異彩を放ったのが坂本龍馬だ。土佐藩を脱藩した当初、彼もまた熱烈な攘夷の志に浮かされた若者の一人だった。しかし、龍馬の凄みは、時代の変化を敏感に察知し、自らの思想をアップデートし続けた柔軟さにある。
勝海舟との出会いを経て、世界の圧倒的な技術力を知った坂本龍馬は、単なる外国排除の無意味さに気づく。大砲をぶっ放すだけでは国は守れない。必要なのは、貿易による国力の増強と、日本が一つになる新しい政治システムだ。仇敵だった薩摩と長州を結びつけ、大政奉還へと舵を切った龍馬の選択は、狭い「攘夷」の枠組みを飛び越え、近代国家・日本を誕生させる原動力となった。