私たちが教科書で見る肖像画を描いたのは、イタリア人画家のエドアルド・キヨッソーネだ。彼は西郷に一度も会ったことがない。明治政府の依頼を受け、親族の顔を組み合わせて「それらしい英雄像」を作り上げた。
明治政府には、西郷を「偉大な創業者」として神格化する必要があった。西南戦争で逆賊として死んだ西郷だが、民衆の間での人気は絶大だった。政府に対する不満を抑え込むためにも、彼を「包容力のある、温和で強大なリーダー」として描き直す必要があったのだ。こうして、政治的意図によって作られたビジュアルが、100年以上にわたって日本人の脳内を支配することになった。