騒動から2年が経過した2016年、映画監督・森達也氏によるドキュメンタリー映画『FAKE』が劇場公開され、再び大きな議論を呼びました。映画はメディアから姿を消した佐村河内氏と妻が暮らす自宅マンションに密着し、取材陣をシャットアウトした空間での生活を克明に記録したものです。
本作のハイライトとなったのは、佐村河内氏自身に「本当に作曲能力があるのか」を検証する場面でした。彼は自宅のシンセサイザーやキーボードに向かい、悪戦苦闘しながらも自力で旋律を組み立て、楽曲を完成させる姿がカメラに収められました。
もともと彼は青年期に劇団の音楽担当やロックバンドの活動歴があり、基本的なコード進行や音楽的センス、楽曲のコンセプトを設計するプロデュース能力自体は持ち合わせていました。しかし、フルオーケストラの精緻な総譜(スコア)を書き上げる専門的なクラシック技法がなかったため、新垣氏という本物の才能に依存し、その過程で「全聾の被爆2世」という強固なキャラクターを演出し続けたという構図が明らかになりました。