千葉県松戸市に稽古場を構える佐渡ヶ嶽部屋の歴史は、そのまま昭和・平成・令和の角界の縮図だ。「猛牛」の異名で土俵を席巻した第五十三代横綱・初代琴櫻傑將が築き上げた厳格な土台の上に、現親方は立っている。義理の父でもある先代から部屋を引き継いだ際、彼が背負ったプレッシャーは想像を絶するものだった。
「先代の敷いたレールを守るだけでは、部屋はいずれ立ちゆかなくなる」。現親方は就任当初、そう漏らしていたという。伝統的な猛稽古を維持しながらも、力士一人ひとりのコンディション管理にいち早く目を向けた柔軟性が、佐渡ヶ嶽部屋を常に幕内上位へ力士を送り込む名門たらしめている要因だ。頑固な職人気質と、時代の風土を的確に捉える俯瞰的な視点。その絶妙なバランスこそが、師匠としての琴ノ若晴將の真骨頂である。