SNSやネット掲示板、Q&Aサイトでは、「坐骨神経痛は歩いて治した」「痛くてもウォーキングを続けたら消えた」といった体験談が散見されます。しかし、脊椎専門医や理学療法士の現場取材・臨床データによると、これらを鵜呑みにして無理に歩行を続けた結果、歩行困難に陥って緊急搬送される患者が後を絶ちません。
なぜこのような危険な誤解が広まるのでしょうか。その背景には、日本社会に根強く残る「痛みに耐えて体を動かすことが美徳」という根性論や、運動信仰があります。痛みを抱えながら無理に歩くと、体は無意識に痛む側の足をかばう「逃避性跛行(かばい歩き)」を起こします。この代償動作によって反対側の股関節や膝、健側の腰背筋に極端な過負荷がかかり、二次的な関節障害や筋膜性疼痛を併発する悪循環に陥るのです。
実際の医療現場における証言でも、「『痛みを我慢して毎日1万歩歩いた』と誇らしげに語る患者ほど、MRIを撮ると神経根の浮腫が重篤化しており、結果的に手術適応になってしまうケースが多い」と報告されています。痛みを伴うウォーキングはリハビリではなく、自傷行為になりかねないという現実を直視しなければなりません。