ネット上の掲示板やSNSでは「リハビリ職は将来性がない」「30歳を過ぎても手取り20万円台前半から抜け出せない」といった書き込みが散見されます。なぜ国家資格を保有し、専門的な治療技術を提供しているにもかかわらず、給与が伸び悩んでしまうのか。その背景には、個人の努力では打破できない医療保険・介護保険制度の構造が存在します。
1. 公定価格(保険点数)による「売上の上限」が存在する
製造業やIT業界であれば、画期的な製品の開発や業務効率化によって社員1人あたりの売上を数倍から数十倍に拡大させることが可能です。しかし、作業療法士の主たる収益源は、厚生労働省が定める診療報酬および介護報酬です。現行の制度上、疾患別リハビリテーション料の算定は1日最大24単位(1単位=20分、原則は1日18単位まで)と厳格に定められています。
仮にどれほど卓越した臨床技術を持つベテラン作業療法士であっても、1日に請求できる診療報酬の上限は2万数千円前後で頭打ちになります。つまり、「1人のスタッフが稼げる売上の天井」が制度上あらかじめ固定されているため、医療法人や介護事業所側も大幅なベースアップ原資を確保できない仕組みになっているのです。
2. 看護師のような「夜勤手当」がつかない勤務体系
同じコメディカル職種である看護師の平均年収(約500万円前後)と比較して作業療法士が低く見える要因の1つが、夜勤手当の有無です。病棟看護師の場合、月4〜5回の夜勤に入ることで毎月4万〜6万円程度の手当が上乗せされます。対して作業療法士の業務は原則として日勤帯(8時30分〜17時30分など)で完結するため、当直手当や深夜割増賃金が発生しません。ワークライフバランスの観点からは身体的負担が少ないメリットと言えますが、総支給額を押し上げる手段が限られているのが実情です。
3. 診療報酬・介護報酬改定によるマイナス圧力
医療費・介護費用の国家的な抑制方針が続く中、過去数回の改定においてリハビリテーション関連の報酬は包括化や要件厳格化が進められてきました。現場の管理職からは「加算要件を維持するための書類作成や実績管理の手間が増加したにもかかわらず、単位あたりの単価が引き下げられ、法人全体の利益率が圧迫されている」という悲鳴が上がっています。法人の利益が圧縮されれば、必然的に現場セラピストの年間昇給額は1,000円〜3,000円程度に抑制され、生涯年収の伸び悩みへと直結します。