食品の購買意欲をそそるネーミングにおいて、親しみやすさや郷愁は強力な武器となる。当時のフードマーケティングの観点から見れば、「お母さん」という言葉が持つ温もりや安心感は、単身世帯や忙しい共働き世帯への強力なアプローチだった。商品を手に取らせる心理的ハードルを下げる意図が見事に機能していたのは事実だ。
しかし、デジタル社会におけるブランドコミュニケーションの難しさは、ターゲット層の意識変化とネーミングの固定観念が衝突した点にある。かつての「おふくろの味」という記号が、現代においてはジェンダー論争の標的となり得るリスクを浮き彫りにした。
企業が下した決断の裏には、目先の批判をかわすこと以上に、将来の主要顧客となるZ世代やミレニアル世代とのエンゲージメントを損なわないという計算があった。ノスタルジーに頼るマーケティングから、誰もが気兼ねなく選択できるユニバーサルな価値提供へのシフト。これこそがリブランディングの核心であった。