近年、高校野球界のトレーニング理論は飛躍的な進化を遂げた。データ測定技術の普及により、球速150キロを叩き出す高校生投手はもはや珍しくない。しかし、球速が上がれば上がるほど、打者側の対応能力もまた引き上げられる。150キロの直線的なファストボールに対して、現代の高校球児はバッティングマシンやVRトレーニングを駆使して完璧に目を慣らしてくるのだ。
そこに冷や水を浴びせるのが、横手からのリリースである。オーバースローとは明らかに異なる横方向のリリースポイントは、打者の視覚的なタイミングを根本から狂わせる。今大会でベスト4に食い込んだある地方公立校のエースは、「上から投げる投手の150キロより、横から来る135キロのシュートの方が捉えにくいと相手打者に言われます」と不敵に笑う。球速という単一の価値観に対するアンチテーゼとして、横手投げは完璧な回答となりつつある。