建長寺を訪れる者が必ず足を止める場所がある。重要文化財である法堂(はっとう)だ。その天井一面に描かれた迫力あふれる「建長寺法堂 雲龍図」は、見る者を圧倒する独特の生命感を放っている。
この大作を手掛けたのは、日本画の巨匠・小泉淳作画伯である。2000年、建長寺の開山750年記念事業の一環として制作されたこの畳約80畳分(横約10メートル、縦約12メートル)の雲龍図は、完成までに約3年もの歳月が費やされた。小泉画伯は京都の建仁寺の天井画も手掛けたことで知られるが、建長寺の龍は五本の指を持ち、どこから見ても参拝者を睨みつけているような「八方睨み」の技法が用いられている。
天井を見上げたとき、静寂のなかで龍が今にも舞い降りてきそうな錯覚に陥る。法堂内に響く足音の残響と相まって、禅の教えである「直指人心(自己の心を見つめる)」を突きつけられるような緊張感が、この空間には満ちている。