テロ組織テントの首領ノゴーン・ベキ(元公安警察官・山本巧)の存在は、善悪の価値観を根底から揺さぶる。役所広司の圧倒的な表現力によって描かれたベキは、単なる破壊者ではなかった。祖国に見捨てられ、最愛の妻を奪われた絶望の果てに、孤児たちを救うための互助組織としてテントを立ち上げたのだ。
テロ請負によって得た莫大な資金を孤児救済や土地の買い戻しに注ぎ込むベキの姿は、相関図において「巨悪」と「父性」という相反する属性を同時に背負っていた。実の息子である乃木、そして養子として育ち絶対の忠誠を誓うノコル(二宮和也)。この義兄弟の間に生じる嫉妬と葛藤のドラマは、壮大な政治サスペンスに胸を打つ人間味を吹き込んだ。