類まれなる拳の天才でありながら、なぜトキは死病を患い、伝承者争いから脱落することになったのか。その引き金となったのが、核戦争勃発時の「シェルター被曝」という悲劇的な出来事です。
世界が炎に包まれたあの日、避難用シェルターにはすでに多くの一般市民が逃げ込んでおり、収容人数は限界を迎えていました。残されたスペースにはわずか2人しか入れず、扉の内側から施錠する機構が故障していたため、外側から手動でロックをかけなければ全員が死の灰に飲み込まれる絶体絶命の状況に陥ります。
その場に居合わせたトキは、未来ある幼い子供たち、そして弟弟子であるケンシロウとユリアをシェルターの中へ押し込み、自ら外側に残って重い扉を閉ざしました。2週間にわたり高濃度の放射性降下物(死の灰)を浴び続けたトキは、奇跡的に一命を取り留めたものの、髪は白濁し、内臓を激しく蝕まれる不治の病を抱えることになります。己の命を顧みず他者を救うという崇高な精神が、彼の武道家としての肉体を奪うという皮肉な運命を生んだのです。