膵臓がんは、初期症状がほとんどないことから「沈黙の臓器」の病とも呼ばれる。夏八木さんが体に異変を感じ、検査を受けたときには、すでに病状は進行していた。しかし、彼はその事実を公表しなかった。親しい友人や、長年連れ添った仕事関係者にさえも、病状の深刻さは伏せられていたのだ。ただ一人、寄り添う家族だけがその苦しみを知っていた。
抗がん剤治療を受けながらも、彼は仕事を休まなかった。痩せていく体を衣装でカバーし、カメラの前に立てば、病魔に侵されていることなど微塵も感じさせない圧倒的なオーラを放った。周囲が「少し痩せたのではないか」と心配しても、「役作りのためだよ」と豪快に笑い飛ばしていたという。その徹底したプロ意識には、言葉を失うほかない。