かつてのナゴパイナップルパークといえば、見学通路の終点に設けられた試食コーナーで、冷えた完熟パインがトレイにうずたかく盛られ、観光客が爪楊枝を手に好きなだけ頬張る光景が代名詞でした。しかし、この名物パイン食べ放題は完全に終了しています。長年愛されたサービスがなぜ姿を消したのか、運営側の施策転換や観光業界の構造変化を取材すると、主に3つの明確な要因が浮かび上がってきます。
第1の要因は、徹底した衛生管理基準の刷新と感染症リスクへの抜本的対策です。不特定多数の来園者が密集して生鮮果実に手を伸ばすセルフサービスの試食スタイルは、近年の公衆衛生に対する意識の高まりとともに大きな見直しを迫られました。安心・安全を最優先する現代の観光施設基準において、従来のオープンな試食台の維持は構造的に困難となった背景があります。
第2の要因は、深刻なフードロスの削減と持続可能な資源活用です。大量のパイナップルを常に山盛りに保つシステムは、日ごとの来園者数の増減によって廃棄ロスが避けられず、SDGs推進が求められる観光業の観点からも大きな課題となっていました。現在は無駄な廃棄をゼロにし、果汁を一滴残らずジュース、スイーツ、ワインへと加工するアップサイクル型の生産体制へと舵を切っています。
第3の要因こそが最も本質的であり、「お土産直売所」から「滞在型エンタメパーク」へのビジネスモデルの大転換です。かつてのように「無料でパインを食べさせてお土産を買わせる昭和のドライブインモデル」から脱却し、入場料を原資としてアトラクションや景観、世界観に投資する本格的なレジャー施設へと生まれ変わりました。無料食べ放題を廃止した代わりに、園内カフェで提供されるプレミアムパフェや、衛生管理の行き届いたファクトリー見学へと体験価値をシフトさせています。