池内万平氏のキャリアの原点は、父・伊丹十三監督の初期監督作品への出演にあります。弱冠9歳から10歳の頃、伊丹映画の歴史的傑作とされる2作品に相次いで出演を果たしました。
1984年公開の映画『お葬式』では、主人公夫婦(山崎努氏・宮本信子氏)の次男・次郎役を好演。続く1985年の大ヒット作『タンポポ』では、宮本信子氏演じるヒロイン・タンポポの一人息子役として出演し、トラック運転手ゴロー(山崎努氏)との温かい交流を描く場面などで印象的な表情を見せました。
当時、映画関係者や観客の間では「将来は両親と同じく名俳優になるのではないか」と期待されましたが、万平氏自身は子役としての出演を継続的な芸能活動の足がかりとはしませんでした。高校卒業後は安易に芸能界へ進む道を選ばず、自らのアイデンティティを模索するためにアルバイト生活など一般社会での経験を重ねました。
偉大な両親と表現者一族という環境の中で、自らの生き方を慎重に見極める期間を経て、万平氏がたどり着いたのは「父・伊丹十三の遺産を守り、正しく世に伝え続ける」という重責でした。株式会社伊丹プロダクションの代表取締役に就任した後は、散逸しかねない膨大なエッセイ原稿、イラスト、映像素材のアーカイブ化を精力的に推し進めました。
特に岩波書店から刊行された『伊丹十三選集』では編者を務め、父の多面的な業績を体系的に整理。さらに、愛媛県松山市に開設された「伊丹十三記念館」のアドバイザーとして展示企画やグッズ開発、イベント運営に関わるなど、文化事業のプロデューサーとして手腕を発揮しています。