ネット上の掲示板やSNSでは、痴漢犯罪に関して事実と異なる誤った言説が散見されます。代表的な誤解と、実際の法解釈・判例基準を整理します。
誤解1:「服の上からの接触なら罰金刑で終わる」
これは最大の誤解です。過去の最高裁判所判例および近年の下級審判決において、「衣服の上からであっても、胸部を鷲掴みにする行為や乳首を指先で強くつまむ行為は、客観的に被害者の性的自由を侵害する重大なわいせつ行為である」として、旧強制わいせつ罪(現・不同意わいせつ罪)の成立を認めた判決が複数確定しています。罰金刑の選択肢がない不同意わいせつ罪で起訴されれば、初犯であっても公開裁判が開かれ、執行猶予が付かない限り直ちに刑務所へ収容されます。
誤解2:「証拠がなければ警察は相手にしてくれない」
痴漢事件では密室・密着空間での犯行が多く、現場写真や動画が存在しないケースが大半です。しかし、警察の捜査では「被害者の供述の一貫性」「被疑者の手の甲や指先から検出される衣服の繊維痕(微物鑑定)」「駅構内や車内の防犯カメラ映像による行動軌跡」などを科学的に照合します。物証がその場で見当たらなくても、警察への迅速な通報と事情聴取によって犯行が立証される事例は数多く存在します。
誤解3:「男性側は身に覚えがなくても示談に応じるしかない」
満員電車の揺れによる不可抗力の接触や誤認逮捕(冤罪)の懸念についても、冷静な対応が求められます。身に覚えのない接触で疑われた場合、その場から逃走すると「罪を認めて逃走した」と判断されて勾留リスクが高まります。無実であるならば、逃げることなく駅事務室に向かい、速やかに当番弁護士を呼んで防犯カメラの保全や手の微物検査を要求することが適切な防御策となります。