雪宮鈴という心に深い傷を負った産婦人科医を演じた吉高由里子。その佇まいは、脆さとプロフェッショナルとしての矜持が同居する複雑な陰影を帯びていた。感情を殺して生きる彼女の日常に、嵐のように飛び込んできたのが柊一星役の北村匠海だ。
二人の実年齢差は10歳。しかし画面から伝わってきたのは、年齢差など消し飛ばす圧倒的な熱量だった。北村は手話を単なる記号的なコミュニケーションツールとしてではなく、全身の筋肉と眼差しで語りかける「魂の言葉」へと昇華させた。現場での二人は、カメラが回っていない時間も途切れることのない軽快な掛け合いを繰り広げ、互いのリズムを緻密にチューニングしていたという。吉高の放つしなやかな包容力と、北村の野性的かつ繊細な直感が完璧に噛み合った瞬間、本作の魔法が生まれた。