「翠雨」の正しい読み方は「すいう」です。初夏、山野や庭園の草木がいっせいに芽吹き、みずみずしい緑に覆われるころに降る雨を意味します。降り注ぐ雨そのものに色がついているわけではありませんが、雨滴を受けていっそう鮮やかに輝く青葉の情景を、雨そのものの名として昇華させた詩的な表現です。
語源を探ると、漢字「翠」の成り立ちに行き着きます。「翠」はもともと、鮮やかな青緑色の羽を持つ鳥「翡翠(カワセミ)」の雌を指す文字でした。やがて宝石のヒスイや、深く澄んだエメラルドグリーンを表すようになり、東洋の詩文においては「青く茂ったみずみずしい樹木」の美称として定着しました。
漢詩の伝統において、雨が植物の色を深める様はしばしば詠まれてきました。埃を洗い流し、植物の生命力を際立たせる雨を「翠を深める雨」として捉えた感性が、この言葉の根底に流れています。単に「雨が降っている」という気象現象の伝達にとどまらず、雨粒をまとった新緑の艶やかさまで聴覚と視覚に訴えかける点が、この言葉の大きな魅力です。