本場所の会場に響く櫓太鼓は、常に同じリズムで叩かれているわけではありません。大相撲の1日の進行に合わせて主に3種類の打ち分けが行われ、それぞれに明確な意味とメッセージが込められています。
早朝の澄んだ空気をつんざくように鳴り響くのが「一番太鼓」です。朝8時前後の開場に合わせて打たれ、「本日の興行が始まる」という合図を力士や近隣住民に知らせます。軽快で勢いのあるリズムが特徴で、1日の始まりを爽やかに告げる役割を果たします。
続いて、昼前後に打たれるのが「寄せ太鼓」です。観客に対して「まもなく幕内の取組が始まるので、席についてください」と促す合図であり、人を呼び寄せる意図からその名が付きました。小気味よいテンポで打たれ、本場所独特の高揚感を演出します。
そして、全取組が終了し弓取式が終わった直後に響くのが「はね太鼓」です。「本日の興行は無事に終了しました。足元に気をつけてお帰りください、そして明日もまたお越しください」という感謝と再会を願う意味が込められています。弾むような特有のリズムは、観戦帰りの観客の背中を心地よく見送ります。
なお、千秋楽(最終日)には「明日」がないため、通常のはね太鼓は打たれません。興行の完全終了を意味する特別な打ち納めが行われるなど、粋な風習が今なお厳格に守られています。