ネット上の筋トレ情報において最もミスリードが多いのが、「大胸筋下部の内側(谷間の最下部)をどう埋めるか」という命題です。多くの情報サイトでは「とにかくダンベル同士を強く押し付けろ(ヘックスプレス)」と推奨されますが、これには力学的な落とし穴が存在します。
胸筋下部内側ダンベルの刺激を最大化する際、手掌面同士を平行に押し付けるだけでは、上腕三頭筋の内側頭に負荷が逃げてしまいがちです。真のコツは、ダンベルを握る小指側にわずかに力を込め、前腕をわずかに内旋させながら「肘をみぞおちの中心へ引き寄せる」ことにあります。大胸筋の付着部は上腕骨の内側にあるため、手先を寄せることではなく、上腕骨同士を近づける意識を持たなければ内側の線維はフル収縮しません。
また、過度なストレッチ動作に対する盲信も危険です。「筋肉を限界まで引き伸ばせば肥大する」という言説に囚われ、フライ種目で肘を深く落としすぎると、大胸筋下部ではなく烏口肩峰靭帯や肩甲下筋腱に剪断(せんだん)応力が集中します。ストレッチ刺激は、肘を深く落とす深さではなく、「胸郭を高く保持したまま、上腕骨を遠くへ引っ張る」テンションの張り具合で稼ぐのがプロの鉄則です。