行政の改革に先駆け、徳島の地で命の危機に瀕した犬たちを救い続けてきたのが、NPO法人ハート(HEART)をはじめとする民間団体である。創設者のスーザン・マーサー氏は、徳島県内で大量の殺処分が行われていた窮状に心を痛め、ノーキル(殺処分を行わない)シェルターを設立。公的な支援が乏しかった時代から、行き場を失った犬たちを保護し、治療し、里親へと繋いできた。
マーサー氏が提唱し続けてきたのは、単に「かわいそうだから助ける」という情念にとどまらない、本質的な動物福祉(アニマルウェルフェア)の徹底だ。適切な広さのドッグラン確保、質の高い医療の提供、そして精神的なケア。民間ボランティアたちの弛まぬ献身と理念の浸透が、行政の腰を上げさせ、地域住民の意識を少しずつ変えていった。徳島における保護活動の歴史は、草の根の情熱が公的制度をも動かした好例といえる。