医学界の視線も変化を見せている。アメリカ小児科学会の指針では、幼児期における移行対象の所持は健全な感情発達の自然な一部であり、無理に取り上げようとすることはかえって強い不安障害を誘発するリスクがあると警告されてきた。日本の日本小児精神神経学会でも、子どもの自己肯定感や感情調節機能を育むプロセスにおいて、こうした対象が果たす役割の重要性が長年にわたり研究されている。
近年では、この「子どもの健全な発達プロセス」が大人になっても形を変えて存続している点に注目が集まる。かつては成長とともに卒業すべきものと考えられていたが、現代の臨床現場では、社会人がデスクに特定の触感クッションを置いたり、自宅で決まった毛布に触れたりする行為も、同じ自己調整メカニズムの延長線上にあると解釈されている。