たい焼き愛好家の間で日常的に使われる「天然モノ」と「養殖モノ」という言葉。これは作家の宮嶋康彦氏が著書で提唱した表現であり、焼き型の構造と製法の違いをユーモラスに分類した業界標準の呼称です。
「天然モノ」とは、1匹ずつ焼き上げる単胴型の鋳型(重さ約2キログラム)を用いる「一丁焼き」を指します。職人は炭火や強力なガス火の上で、重い鉄型を絶え間なく返し、火の通りを指先の感覚で見極めます。直火の高熱で一気に水分を飛ばすため、皮は極限まで薄く、表面はパリッと香ばしい焼き上がりに仕上がります。
対して「養殖モノ」は、一度に6匹から10匹以上を焼き上げる大型の連丁型プレートを使用する製法です。生地をたっぷりと流し込んで両面を均一に合わせるため、ふっくらとした厚みのあるカステラ状の生地に仕上がります。大量生産に適しており、均質な柔らかさを保てるメリットがある一方、天然モノ特有の「焦げの芳ばしさ」「皮のサクサク感」とは異なる食感になります。