『Dr.コトー診療所』は、山田貴敏による同名漫画(小学館『ビッグコミックオリジナル』連載)を原案としています。しかし、ドラマ版および劇場版は、テレビドラマ史に残る脚色が施されており、原作とドラマの間にはいくつかの決定的な差異が存在します。
まず、主人公のキャラクター造形が大きく異なります。原作の五島健助は恰幅が良く、飄々とした性格の中に時に豪胆さを覗かせる医師ですが、ドラマ版の吉岡秀隆演じるコトー先生は、穏やかで心優しく、どこか頼りなげでありながら芯に強い信念を秘めた人物として再構築されました。この繊細なアプローチが、フジテレビの演出陣による綿密なヒューマンドラマ路線と見事に合致しました。
また、物語の舞台となる架空の島「志木那島(しきなじま)」のモデルとなったのは、鹿児島県下甑島(しもこしきしま)の下甑手打診療所で長年僻地医療に尽力した医師・瀬戸上健二郎(せとうえ けんじろう)氏の実話です。原作漫画はこの瀬戸上医師の体験記を基に執筆されましたが、フジテレビのロケ地選定において「日本で最も夕日が最後に沈む最果ての地」として選ばれたのが、沖縄県の与那国島でした。この地理的変更により、コトー先生が自転車で走る比川浜のエメラルドグリーンの海や雄大な断崖絶壁が、作品の代名詞となりました。